ディーゼル排気微粒子(DEP)の経気道曝露が「脂肪肝」に及ぼす健康影響を、生活習慣病のモデル動物を用いて明らかにすること、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に与える影響についても明らかにすること、増悪メカニズムを分子レベルで解明し、バイオマーカーを探索することを目的とした。今年度は、SPM・DEPが「脂肪肝」を増悪するメカニズムの解明とバイオマーカーの探索に関する研究を中心に研究を遂行した。生活習慣病モデルマウス(肥満、糖尿病、高脂血症を呈する)としてC57BL/KSJ db/dbマウスと、コントロールマウスとしてC57BL/KSJ db/+mマウス(5週令で導入)を用い、下記の4群で経気道曝露を施行した。1.db/+m-vehicle曝露群;2.db/+m-DEP曝露群;3.db/db-vehicle曝露群;4.db/db-DEP曝露群:vehicle、DEPの縣濁液は、6週令より24週令までをめどに、週に1回、経気道曝露を施行した。 過食と肥満は、db/dbマウスでdm/+mマウスに比較し有意に顕著であったが、DEP曝露による差はなかった。血糖やフルクトサミンも、db/dbマウスでdm/+mマウスに比較し有意に大きかったが、DEP曝露による差はなかった。肝重量や肝機能は、db/dbマウスでdm/+mマウスに比較し有意な増悪が見られ、DEPにより一層悪化した。NASHに相当する所見は24週齢までは見られなかった。 今のところ、発現遺伝子解析によっては有望なバイオマーカーは特定されていない。しかし、HELをはじめとする酸化ストレスマーカーとカルボニルストレスマーカーは、db/dbマウスでdm/+mマウスに比較し有意な増悪が見られ、DEPにより一層悪化した。DEPによる脂肪肝の増悪、カルボニルストレス、酸化ストレスの病態生理学的重要性、並びに、バイオマーカーとしての意義を明らかにした。
|