研究概要 |
タバコは種々の健康障害要因の中でも最も影響が大きく、タバコ規制は今日の最大の公衆衛生的課題である。それにもかかわらずタバコが広く存在し続けているのかのメカニズムを経済学・社会学的アプローチも含め明らかにする研究が今、最も必要である。そこで昨年来そうした方向性の研究で世界の指導的な立場にいるシドニー大学のChapman教授と連絡を取ってきたが、今年度は彼のまとめた資料を翻訳し、問題点の整理分析を行った。同時に昨年からの継続として、米国におけるタバコ訴訟の結果として公開されたタバコ会社の膨大な内部文書(合意文書)を分析し、これまでに明らかにしすでに論文として発表したBritish American Tobacco(BAT)社の中国のWTO加盟による貿易自由化に際してのロビー活動の時期以降の中国のタバコに対する動向を分析した。3億人の喫煙者がいる中国は世界最大の市場であり、世界のタバコ会社が販売の拡充のために様々方策をとっている。これまでこうした世界のタバコ会社の中国における活動についての研究はPhillip Morris International(PMI)とBATについてのものが多く、世界第3位のJapan Tobacco(JT)については報告がほとんどない。それはJTが米国での合意に加わっておらず、直接の文書公開がないこと、訴訟の数が少ないことなどがあり情報が少ないがことが関係している。そこで中国国内タバコ市場の分析資料や中国語のWebページの検索を行い情報を収集した。その結果、JTは中国を重視し、国際部門子会社に委託するのでなく本社が直指揮していること。 JTは中国のタバコ会社と提携あるいは緊密に連絡を取り、徐々に販売を増やしていること、マイルドセブンの名を冠した若者向けイベントの企画運営を行っていることなどが明らかになった。 2008年秋以降の世界的な不況の中でほとんどすべての業種が売上を減らしているが、2008年末までのPMI,BAT,JT3社はいずれも大幅に販売と収益を伸ばしており、今後一層タバコ会社の動向に注目し、分析発表していく必要がある。
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