研究概要 |
わが国では,平成17(2005)年に起きたアスベスト(以下,石綿)、パニックを契機として,集団および個人を対象に石綿疾患のハイリスク者をスクリーニングする(「拾い上げ」を行い,精密な検診やフォローアップを実施する)需要が高まっている。このことは,同時期に,多くの医療機関や検診機関が初めて「石綿外来」や「石綿検診窓口」を設置するに至った現象にも表れている。本研究では,今年度,二つの研究実績を達成した。 【1】医療機関の石綿外来や石綿健診窓口を担当する医療専門家が,石綿曝露の問診に際して,どのように取り組み,問診票などのツールを活用し,またどのような技術的困難を抱えているか,などについて明らかにした。すなわち全国規模の質問票調査の集計結果から,職業歴は自覚症状と既往歴に並ぶ優先度の高い問診項目となっていること,石綿に関する問診を医師自らが4-10分かけて実施しているものが多い一方,3分以下や11分以上の時間をかけているものが各2割いること,石綿曝露に関する問診票を活用しているものが7割もいるにもかかわらず,塁存の問診票が使いやすいと感じているものは5割以下である,などの点を明らかにした。現在,論文にまとめ,まもなく投稿を終了できる。 【2】医療機関の問診場面で,医療関係者が受診者から石綿曝露歴を正確かつ効率的に同定するだめの支援ソフトウェアの開発を最終目標に,ソフトウェア会社と共同で,システムコンセプトを確立し,システムとデータベースの基本設計を終了した。さらにテストランのための基本データの入力を終えた。すなわち,WINDOWSパソコン上で稼働する研究用プロトタイプシステムを完成させた。今後,最終年度においてベータ版のアップクレート,システムの実用化に取り組む予定である。
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