研究概要 |
石綿関連疾患のハイリスク者をスクリーニングする際など、石綿曝露歴を評価するニーズが高まっている状況に鑑み、問診情報を基に概略的リスクを推定し、次段階の診断や追跡方法につなげる支援ツールの開発が急務である。本課題では、主に医療現場において石綿曝露が疑われる受診者への問診場面を想定し、受診者から得られる職歴等情報を基に、石綿曝露歴の評価・診断を支援するソフトウェア開発を目的とした。ただちに運用可能な完成版には至らなかったもののプロトタイプ構築を経てベータ版の構築を達成した。今後の市場ニーズや追加的予算措置等の条件次第で完成版につなげられる。 【1】問診者は受診者の表現した職業・業務・曝露に関する言葉をキーワードとして入力し、自らの専門的知識を組み合わせながら系統的分類に即して職務を同定できる。石綿曝露形態や程度、石綿関連疾患リスクがフィードバックされるロジックとデータベースを備えたベータ版が構築された。本システムにより個人の職歴・居住歴・生活歴の履歴情報が時系列的に整理されリスクスコアが算出される。入力情報とリスクスコアの関連を評価する際には、問診情報の「確実性」「頻度」「濃度」等、キーワードには「関連強度」を設定できるロジックを採用した。石綿の職務曝露連関に関するデータベースは代表的職種を含めるにとどまった。 【2】全国の石綿外来や石綿健診実施機関を対象に実施した質問票調査により、石綿曝露の問診の取り組みや問診ツールの使用に関する状況を明らかにした。石綿問診を医師自ら4-10分かけて実施する者が多く、石綿曝露問診票を活用している者は7割以上だが、同問診票が使いやすいと感じている者は5割以下であった(長尾・高橋ら産衛誌2008,50:145-51;成果物であることを明示)。このことから問診支援ツールとしての支援ソフトの開発にはニーズがあると考えられた。
|