研究課題
摂食調節やストレス反応に関与するペプチドに対する抗体価と摂食障害に関係の強い心理・行動特性、身体計測値、および血清脂質、耐糖能等との間の関連を、摂食障害の好発年齢にある健常若年女性を対象に検討した。摂食障害への罹患や重篤な精神・身体疾患の既往のない女子大学生290名で採血および身体計測、心理測定を施行した。抗ペプチド自己抗体はELISAで測定した。先行研究で摂食障害患者で検出頻度が高いことや、健常者の摂食障害傾向と関連することが報告されていた、α-melanocortin stimulating hormone (αMSH)に対する自己抗体価と今回調べた若年女性におけるこれらの指標との間には関連は認められなかった。しかし、視床下部で作用する別の摂食調節ペプチドAに対する自己抗体価は体格指数や体脂肪率、耐糖能の指標との間で有意な相関を示した。さらに別の摂食調節ペプチドBに対する自己抗体価はペプチドBの血液中の濃度と正の相関を示し、血糖値とは負の相関を示した。これらの結果は摂食調節関連ペプチドに対する自己抗体が、体重、体型の違いに寄与していることを示唆する。一方、心理・行動特性に関する指標と関連する自己抗体は今のところ認められていない。現在、他のペプチドの自己抗体についても検討を進めている。また、ELISAによる測定系に加えて脳免疫組織切片での抗体検出系を確立する予定である。現在、国立精神・神経センター国府台病院および武蔵病院で倫理委員会の承認を得て、摂食障害患者のサンプルの収集を行っており、健常対象者と自己抗体検出頻度、抗体価との比較を行う。さらに、マウスを用いて自己抗体投与による摂食・体重、ストレス反応等の変化も検討する予定である。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (3件)
Am J Med Genet B, Neuropsychiatr Genet 141B
ページ: 929-934
神経研究の進歩 50(5)
ページ: 748-759
ホルモンと臨床 54(4)
ページ: 343-351