抗神経ペプチド自己抗体の摂食障害の病態のおける役割を調べるため、まず、末梢性・中枢性の摂食促進性ペプチド、摂食抑制性ペプチド、ストレスホルモンに対する自己抗体価と、摂食障害に関係の強い心理・行動特性、身体計測値、および血清脂質、耐糖能等との間の関連を、摂食障害の好発年齢にある健常若年女性を対象に検討した。抗ペプチド自己抗体はELISAで測定した。その結果、抗ghrelin抗体価が体脂肪率、皮脂厚、血清遊離脂肪酸と負の相関を、抗desacyl ghrelin抗体価が血清コレステロール値と負の相関を示した。視床下部ペプチドの中では抗NPY抗体が体脂肪率、血糖、インスリン抵抗性と負の相関を示し、抗orexin抗体はBMI、体脂肪率、血清遊離脂肪酸と負の相関を示すのみならず、やせ願望や抑うつ、不安とも負の相関を示した。すなわち、摂食促進性ペプチドに対する自己抗体が体脂肪や血清脂質、インスリン抵抗性を減少させ、摂食障害に特徴的な心理特性にも関連していることが示唆された。一方、摂食障害患者11名と健常者との比較では上記抗ペプチド自己抗体価に明らかな差は認められなかったが、結論を得るためには、摂食障害のサンプル数のさらなる増加と、摂食障害のタイプ別の検討が必要である。一方、マウスの脳タンパクに対する抗体が一部の摂食障害患者血清に認められ、さらに確認と抗原タンパクの同定を進めている。
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