研究課題/領域番号 |
18659215
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
菅野 健太郎 自治医科大学, 医学部, 教授 (60179116)
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研究分担者 |
山本 博徳 自治医科大学, 医学部, 助教授 (10311937)
大澤 博之 自治医科大学, 医学部, 講師 (70260833)
平井 義一 自治医科大学, 医学部, 教授 (00127581)
太田 英孝 自治医科大学, 医学部, 研究員 (60424016)
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キーワード | 小腸 / 細菌叢 / 嫌気培養 / Helicobacter pylori |
研究概要 |
ヒト全小腸の細菌叢の系統的検索は適当な検体採取法がないためこれまで殆ど検討されてこなかった。われわれの施設で開発したダブルバルーン内視鏡を用いることにより、全小腸へ内視鏡的検索を行いかつ検体採取が可能となった。われわれは、今回の研究(当大学倫理委員会の承認済み)で、小腸内視鏡検査の際に検体を採取する方法を確立し、小腸各部位における細菌総数、菌種の同定を開始した。特に注意を必要としたのが、小腸に存在する偏性嫌気性菌の培養であり、これには送気に用いるガスを窒素とすること、嫌気培養装置での培養液調整、保存等の準備が重要であった。また、通常の小腸内視鏡検査アプローチでは、経口的アプローチと経肛門的アプローチを用いているが、これらのアプローチによって菌種、菌数の違いが生じる可能性が考えられた。このため、同一個人で経口ならびに経肛門の2つの異なるアプローチで求めた場合の菌種、菌数について比較検討を行った。これまで、約30例の患者について胃から大腸に至る全消化管の総菌数、細菌叢の検討を行い、基礎的データが得られている。すなわち、小腸細菌数は胃液のpHによって影響をうけ、胃液pHが2以下の場合には空腸では極めて少なく(小腸液1mlあたり102個以下であり、以降深部小腸にいたるまで一定の割合で増加し、回盲部ではほぼ大腸と同程度の菌数が回収された。菌種では、乳酸菌であるLactobacillusなどのほか、深部小腸にいたるほど、偏性嫌気性菌であるBacteroides、Fusobacteriumなどの菌が大きな割合を占めていることが明らかとなった。また萎縮性胃炎など、胃液pHが高い場合には胃内での胃液による殺菌作用が不十分なために胃内の菌数が極めて多く、それに伴って空腸での細菌量が多くなっており、ヘリコバクター・ピロリ陽性者では小腸からもヘリコバクター・ピロリが培養同定された。また、病的小腸での検討では、細菌数、細菌種の大きな変動がある例が認められ、消化管粘膜機能の異常の原因となっている可能性が考えられた。
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