研究概要 |
消化器癌発症の分子機構として考えられているミスマッチ修復遺伝子の異常によるマイクロサテライト不安定性やDNA異常メチル化やヒストン修飾異常がCpGアイランドに蓄積する機構(CPG island methylator phenotype-CIMP)が報告されており、これらの異常は一定の頻度の消化器癌の発症の分子機構と考えられる。しかし、染色体欠失の集積する染色体不安定性の分子機構は明らかになっていない。染色体不安定性の分子機構を明らかにするためには法の開発が急務であった。本法はJSNP(http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp/)に登録されているSNPのうち原則としてアリル頻度50%に近いものをマーカーとして用いる。すでに数百の候補SNPのうち解析に有用な20種類のSNPの絞込みに成功している。これらはSMIO1-SMI12,SMI2-01-23,SMI3-01-10などであり、インフォーマティブなものを細胞株や症例に応じて検討している。膵癌の治療標的を見出すことを目的に、膵癌細胞株におけるSNPアレイ法を検討したところ、すでに染色体不安定性が明らかな細胞株、全く認めない細胞株においてこの方法がきわめて鋭敏に染色不安定性を検出すうることを明らかにした。また、膵癌細胞株をSCIDマウス皮下に移植し、形成した膵癌において再現性よく、染色体不安定性を検出しうることを明らかにした。切除癌組織においてSNPアレイシステム法を応用し、数例の手術材料より、きわめて染色不安定性の高度な例について株化を行っており、今後、遺伝子導入法とRepresentational Difference Analysis (RDA)法との組み合わせで、キー分子の同定を継続していく。
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