膵外分泌腺再生の試みはあまり行われていない。本研究では、膵臓の幹細胞から膵外分泌細胞を再生させることではなく、残存しているわずかな膵外分泌細胞の機能をよみがえらせて、膵外分泌機能の回復と改善を望むための手段を探索することを計画した。基礎実験ではラスシグナルに関係する分子の発現を調節することにより目的を達成できる可能性が示唆された。ヒトとげっ歯類の膵臓の決定的な相違はCCK-A(1)受容体(R)の存否である。げっ歯類の膵外分泌腺はCCKの持続投与によって効率的に肥大、増殖するが、ヒトではそれがみられない。KRAP遺伝子欠損マウスでは、膵腺房細胞の消化酵素含有量と分泌量が増加していることから、CCK-AR KO(homo-/-)および野生型(wild+/+)マウス(♂10週令)の白色脂肪、膵臓、肝臓のKRAP遺伝子発現をリアルタイムPCRで測定した。抽出したtotal RNA O.5μgを用いてcDNAの合成を行った。これらcDNAを用いてKRAPのmRNA発現量を定量的リアルタイムPCR:相対定量で測定した。KRAPの増幅には2ペアの場所の異なるプライマーペアを使用した。KRAP測定値のサンプル間補正にはβ-actinの値を用いた。結果は、膵臓、肝臓では差が見られなかったが、白色脂肪で、CCK-AR KOマウス(homo-/-)のほうが約2倍に増えていた。これよりCCK-AR KOマウス(homo-/-)では、エネルギー代謝回転に何らかの変化がある可能性が示唆される。
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