研究概要 |
難治性心疾患の一部は遺伝子変異による機能性タンパクの細胞内輸送障害に起因する。そこで本研究では、生体タンパクの細胞内輸送障害にっいて、病因となる遺伝子変異と細胞内輸送障害に関わる分子間の機能連関異常を解明するとともに、その異常を是正するためのペプチドや低分子化合物のスクリーニングシステムを開発し、それに基づく治療薬の開発を目的とした。本年度は以下の成果を得た。QT延長症候群患者に見出された2種の変異について、それらがいずれもこれまでに知られていない新たなメカニズムで細胞内輸送障害を来すこと、すなわち1種はゴルジ体内でのサブユニット結合異常を来すこと、他の1種はER内貯留を来すことを明らかにした。また、点変異体を作製し、それらを用いた機能解析から、前者はLeuリピートの構造異常によること、後者は新たなER貯留シグナルが産生されることによることを解明した。ついで、それらの変異イオンチャネルにmyc-tagを付加した遺伝子を安定して発現する細胞株を樹立し、これを用いてチャネル輸送障害を解除する低分子化合物のスクリーニング系を開発した。種々の変異体を用いた実験から、このスクリーニング系が細胞表面に発現したチャネルの定量的測定を可能とすることを確認した。ついでこれらの細胞株を用いて、約3,000種の低分子化合物の一次スクリーニングを行い10種の候補化合物を同定した。そこで、さらに二次スクリーニングを進めると共に、8,000種の低分子化合物のスクリーニングを実施している。一方、Brugada症候群患者に見出されたサルコレンマタンパク変異による機能変化を検討したところ、当該遺伝子変異は心筋Naチャネル複合体のイオンチャネル機能変化を来すこと、スモールサブユニット(SCN1B)およびMOG1と結合することを見出した。
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