病態心でのイオンチャネルリモデリングの病態は、胎児型イオンチャネル遺伝子の再発現によると現在考えられている。我々は、イオンチャネルの発達分化に伴う変化がどのような機序で制御されているかをmRNA・蛋白発現の解析を介して研究をしてきた。今回の実験では、タンパク質をコードしていないnon-cording RNAによる転写制御に注目し、胎生9.5日齢・18日齢・成熟マウスの心室筋のnon-cording RNAの発現解析を行った。 まず初期の実験で、NRSF発現に作用するNRSE dsRNAの定量解析を行った。NRSE dsRNAは胎児型遺伝子の抑制因子であるNRSFのmRNA発現を刺激すると神経細胞で報告されている。胎生9.5日齢・18日齢・成熟マウス心室筋でNRSE ds RNAの発現がダイナミックに変化すると予想して実験を行ったが、その発現量は定量PCR法では検知できない量であり、解析不能であった。 そのため、我々は蛋白翻訳を制御するnon-coding RNAであるmicro RNAに注目し、胎生9.5日齢・18日齢・成熟マウス心室筋における種々のmicro RNAの発現解析を行った。micro RNAのマイクロアレイ解析法を利用し300以上のmicro RNAの各発達段階での発現量をスクリーニングした。その結果、胎児心筋と成熟心筋ではmicro RNAの発現量に大きな差がある遺伝子がいくつかみつかった。その中には、リモデリングによる不整脈発生に寄与しているといわれているT型カルシウムチャネルやHCNチャネルを制御していると推定されるmicro RNAが含まれていた。 次年度は、それらのmicro RNAの定量実験を行い、特定のmicro RNAをマウスの新生児心筋に遺伝子導入することにより、micro RNAのの転写制御が及ぼす機能的変化を確認する予定である。
|