研究概要 |
本研究では、糖転移酵素α1,6-フコース転移酵素に着目して、非小細胞肺癌における発現異常(発現の低下・喪失)を免疫組織化学法で解析し、臨床病理学的因子、患者予後、細胞増殖能、各種分子マーカー発現、他の糖転移酵素発現との関係を解析して、非小細胞肺癌におけるα1,6-フコース転移酵素の発現異常の臨床病理学的意義を明らかにすることを目的とした。 非小細胞肺癌手術摘出腫瘍220腫瘍を材料として、α1,6‐フコース転移酵素の発現について特異抗体を用いて免疫組織化学法(Streptavidin biotin法)で解析した。肺癌組織における解析と同時に、肺葉切除された同一手術摘出材料内に存在する正常肺・気管支組織おける発現や随伴する非腫瘍性疾患肺組織における発現を解析した。α1,6‐フコース転移酵素に対する特異抗体は、大阪大学大学院医学研究科生化学・分子生物学教室が開発したものを用い、抗体の希釈濃度は1600倍とした。抗原賦活法としてオートクレーブ法を用いたところ、メチルグリーンで十分な核染色が得られず、ヘマトキシリンでは核染色が得られた。 α1,6-フコース転移酵素の発現は、正常気管支上皮細胞、正常気管支腺細胞では認められた。非小細胞肺癌においては、組織型では腺癌に比べて扁平上皮癌で発現の低下が認められた。また腺癌のなかでは、分化度では高分化なものに比べて低分化なもので発現の低下が認められ、臨床病理学的な意義が示唆された。
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