研究概要 |
Birt-Hogg-Dube(BHD)症候群は、1977年に初めて報告された常染色体優性遺伝性疾患であり、皮疹(fibrofolliculoma)、腎癌、肺嚢胞の3種類の病変を特徴とするが、肺嚢胞や気胸などの肺症状のみのBHD症候群例が存在することが明らかになりつつある。本研究では、嚢胞形成の分子生物学的機序を明らかにする端緒となりうる可能性を考え、肺内に嚢胞を多数認める症例についてBHD,遺伝子解析を行った。胸部CTで肺嚢胞を認める44例についてBHD遺伝子変異の有無を検討した。白血球からゲノムDNAを抽出し、DHPLC法でBHD遺伝子の14個のexonを個別にスクリーニングし、変異の疑われるexonのみ遺伝子解析を行い変異を確定した。その結果、22例でBHD,遺伝子の胚細胞変異を認めた。deletion/insertion 18例(exon 6で4例、exon7と11で各1例、exon10で2例、exon12で7例、exon14で3例)、nonsense変異3例(exon5、8、13)、splicing変異2例(exon10、13)であった。DHPLC法ではゲノム上の大きな欠失を検出できない可能性があるため、exon1,4,9,13の4カ所に限ってreal-time PCR法によるゲノムコピー数の定量法を確立し、DHPLC法で異常を認めなかった22症例について検討した。その結果、1例でexon 9と13のreal-time PCRによりゲノム量が正常対照の1/2になっている症例を同定し、サザンプロット法でもRFLPパターンの異常を確認した。本研究では、原因の明かではない嚢胞性肺疾患の約52%(23/44)がBHD症候群であった。BHD症候群では嚢胞は少なく、肺底部・縦隔側に多く認められ、肺尖に嚢胞を認め事が一般的である特発性自然気胸や肺嚢胞の症例、肺末梢にのみ嚢胞の存在する傍隔壁性嚢胞の症例、ではBHD遺伝子異常波認めなかった。
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