(1)中性pHでβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイド線維を伸長させるリゾリン脂質の探索 親水基の異なる5種類のリゾリン脂質について、それぞれ疎水基である脂肪酸の炭素数が異なるものを数種類ずつスクリーニングした(リゾフォスファチジルコリン:5種類、リゾフォスファチジルグリセロール:4種類、リゾフォスファチジルセリン:2種類、リゾフォスファチジン酸:5種類、リゾフォスファチジルエタノールアミン:4種類)。リゾリン脂質を種々の濃度で添加した中性緩衝液中で、シードとなる断片化線維をβ2-mモノマーとともにインキュベートし、線維伸長反応を行い、チオフラビンTを用いた分光蛍光定量法、並びに電顕観察にてアミロイド線維伸長の有無を確認した。その結果、疎水基である脂肪酸の炭素数が14〜18で、中性pHで親水基に陰性荷電を持つ、リゾフォスファチジン酸、およびリゾフォスファチジルグリセロールが、100μM以上の濃度でβ2-mアミロイド線維の伸長促進効果を持つことを明らかにした。 (2)リゾリン脂質がβ2-m分子の立体構造に与える影響の解析 線維伸長効果が認められたリゾフォスファチジン酸のうち疎水基の脂肪酸の長さが16のもの(MPPA)に関して、β2-mモノマーの立体構造に及ぼす影響をCDスペクトル測定により調べた。その結果、MPPAが100μM以上の濃度でβ2-mモノマーを部分的にunfoldさせることを明らかにした。 (3)リゾリン脂質の構造と線維伸長効果、及びβ2-m立体構造変化との関係の解析 リゾリン脂質分子の構造(親水基の種類、電荷、疎水基である脂肪酸鎖の長さや二重結合の有無など)と線維伸長効果の有無及び線維伸長効果の強さとの相関を解析し、陰性に荷電した親水基と適度な長さ(C:14〜18)の脂肪酸を1本持つという構造が、β2-mアミロイドの線維伸長に重要だろうという結論に至った。
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