(1)透析患者における血中脂質プロフィールの解析 103人の血液透析患者、及び14人の健常対照群について、血漿リゾリン脂質濃度(リゾフォスファチジン酸、リゾフォスファチジルコリン)を測定した。その結果、血液透析患者では、健常対象群と比して、血漿リゾフォスファチジン酸濃度が有意に高く、リゾフォスファチジルコリン濃度が有意に低かった。 (2)透析患者血漿のβ2-ミクログロブリン(β2-m)アミロイド線維伸長促進効果、及び脱重合抑制効果に関する検討 透析患者血漿を1/5、1/25、及び1/100の割合で加えた中性緩衝液中で、β2-mアミロイド線維をインキュベートしβ2-mアミロイド線維脱重合抑制効果を調べた。その結果、透析患者血漿のうちリゾフォスファチジン酸濃度が高値の血漿は、1/25、及び1/100量添加した場合、健常群と比して有意に脱重合を抑制し、一方でリゾフォスファチジン酸濃度が低値の血漿は1/5量添加した場合、脱重合抑制効果が有意に低かった。また、同様の条件でβ2-mモノマーのみ、あるいはモノマーとシードとなる断片化線維を共にインキュベートしてもアミロイド線維の形成、アミロイド線維の伸長促進効果は認められなかった。 (3)健常人血漿の脱重合抑制効果に対するリゾフォスファチジン酸添加の影響 リゾフォスファチジン酸を透析患者血漿の濃度に相当するよう(0.25μM〜25μM)に健常人血漿に添加し、脱重合抑制効果を検討したが、有意な脱重合抑制効果の増強は認められなかった。 昨年度、及び今年度の研究結果より、リゾリン脂質(特にリゾフォスファチジン酸)は単独の、そして主要な因子ではないにしても、β2-ミクログロブリンアミロイド線維の伸長を促進し、脱重合を抑制することで、透析アミロイドーシスの発症・進展に関わっていることが示唆された。
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