研究概要 |
多くの細胞質・核質に存在するタンパク質の分解に関わっているのはユビキチン-プロテアソーム系である。この分解系の特徴は、基質特異性が高く、分解速度が速いことである。分解されるべきタンパク質はユビキチンが鎖状に結合され(ポリユビキチン鎖)、タンパク質分解装置であるプロテアソームがポリユビキチン鎖を認識して標的タンパク質ごと分解する。標的タンパク質のユビキチン化に必要な酵素群の中で、特にユビキチンリガーゼは標的タンパク質を認識し、最終的にユビキチンを付加する重要な因子である。 本研究課題においては、各ポリグルタミン病関連タンパク質(ハンチンティン、Atrophin-1、Ataxin(ATX)-1,-2,-3,-17等)には特異的に結合するタンパク質が同定されているので、この結合タンパク質とユビキチンリガーゼであるU-ボックスタンパク質のキメラ酵素(人工ハイブリッドユビキチンリガーゼ)を作製し、ポリグルタミン含有タンパク質が人工ハイブリッドユビキチンリガーゼによってユビキチン化を受け、プロテアソームによって分解される系を構築する。さらに実際の遺伝子治療に応用できるかどうかを検討するために、ウイルスベクターを利用して細胞やマウスへの導入実験を行い、神経機能異常に対する効果を判定する。 特に、ATX-3/MJD1とVCP/p97の結合に注目し、VCPにおける最小結合領域を同定しているところである。現在まで、VCPのN末端側にその結合領域があることがわかっており、その領域とU-ボックスの融合タンパク質を構築することで、その結合とユビキチン化に関する生化学的解析を遂行中である。
|