感染因子プリオンの複製増殖(すなわち正常型プリオン蛋白から異常型プリオン蛋白への立体構造変換)に関与するプレーヤーとしては、いまだにプリオン蛋白以外のものについてはよくわかっていない。本研究では、プリオン複製増殖の場と考えられている早期エンドゾーム細胞膜で発現している分子をsiRNAノックダウン法でスクリーニングを行い、プリオンの複製増殖に関わるプリオン蛋白以外のプレーヤーについて手がかりを得ようとした。 3年間で約150種の分子について、プリオン持続感染細胞においてRNA干渉を用いて調べた。一次スクリーニングではプラスミド型shRNAを用いて検討を行い、異常型プリオン蛋白の産生低下をもたらしたものについて新たな配列を設計したり、化学合成siRNAを用いたりするなどして二次スクリーニングを行った。その結果、2つの分子が見つかったので、レスキュー実験等により入念に特異性を確認した。一つは、GABAA受容体サブユニットβ1で、β1以外の他のサブユニットに関する検討や各種GABAA受容体作用化合物についてさらに検討した。その結果、GabrblのGABAA受容体と関係しない別の機能がプリオンの産生に関与していることが強く示唆された。もう一つは、ある多機能受容体蛋白質で、この蛋白質の阻害蛋白質を発現誘導するとプリオンの産生が低下した。ことより、この蛋白質と阻害蛋白質の両者がプリオン産生を調整していることが示唆された。 プリオンの複製増殖に関与するプリオン蛋白以外のプレーヤー候補として上記の2つの分子を発見することができ、当初の目標を達成した。
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