研究課題
【目的】漢字(意味処理)と仮名(音韻処理)は処理経路が異なるという「読みの二重回路仮説」を、漢字の難易度と文字の物理的形態特性(空間周波数)の観点から事象関連電位(ERP)、機能的MRI(fMRI)で検討した。【方法】対象は右利き健常成人14名。実験1:(1)易しい漢字(易)、(2)難しい漢字(難)、(3)仮名(語)、(4)仮名(非語)の未処理画像(BSF)をランダムに800ms呈示し、128チャンネル脳波計によりERPを記録した。実験2:(1)-(4)の文字を画像処理(LSF、HSF)したものを呈示した時のERPとfMRIを記録・解析した。【結果】実験1: ERPでは、後頭部P100、側頭部N170、頭頂部N400を認めた。P100は、全刺激で振幅、潜時とも左右差を認めなかった。また仮名(語)と漢字(易)との間で振幅の差(仮名>漢字)を認めた。N170では、漢字(易)、仮名(語)、仮名(非語)で有意に左側の振幅が高かった。またN170潜時は仮名が漢字よりも有意に短かった。N400では、漢字間および仮名間で有意な潜時の差を認めた(漢字(易)<漢字(難)、仮名(語)<仮名(非語))。実験2: P100はLSF・HSFともBSFと同様に、振幅、潜時とも左右差を認めなかった。また、LSFがHSFよりも優位に潜時が短かった。N170の潜時は、LSFで仮名(語・非語)が漢字(易・難)より短かった。N400の振幅は、HSFで漢字(易)が漢字(難)より有意に大きく、LSFで仮名(非語)が仮名(語)より大きかった。fMRIでは、左縁上回が仮名の音韻処理、左前頭前野が難易度の高い漢字を処理している結果を得た。【結論】漢字・仮名認知の差は、(1)文字特性からは、P100は物理学的形態特性、N170は文字の形態特性、N400は漢字の難易度や使用頻度を反映する、(2)視覚経路の観点からは、漢字の難易度の処理にはHSF情報がより関与、仮名の形態処理と意味処理にはLSF情報がより関与することが示された。以上より、漢字・仮名の脳内処理に乖離があり、二重経路仮説を支持する結果を得た。
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Progress in epileptic disorders Vol. 5, Event-related potentials in patients with epilepsy : from current state to future prospects. In : Ikeda A, Inoue Y (eds), John Libbey Eurotext, Paris.
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http://www.med.kyushu-u.ac.jp/neurophy/