研究課題
我々はマクロファージ(MΦ)の培養上清より、HDLの主要構成蛋白であるアポ蛋白A-Iと結合する約88kDaの蛋白を精製し、内部アミノ酸配列から炎症性サイトカインであるプログラニュリン(PEPI)と同一であった。PEPIはHDL及びアポA-Iと結合し、MΦの分化に伴って産生が増加し、大動脈、冠動脈の動脈硬化巣のshoulder部分の泡沫化MΦにPEPIが発現した。PEPIはMφのTNFα、IL-1β、MMP-9mRNAの発現を各々約80倍、8倍、3倍に増強し、蛋白発現も著増させた。PEPIによるMφのTNFα・IL-1β・MMP-9発現増強作用は、HDL/アポA-I添加で著しく抑制され、それはHDL/apoA-IとPEPIの結合に起因した。MφのTNFα、IL-1β、MMP-9mRNA発現はPEPI抗体で抑制された。従って、HDLのMΦに対する抗炎症作用はPEPIとの結合を介した炎症性サイトカインの作用抑制によると考えられた。従って、MΦからautocrine的に産生されるPEPIがTNFα、MMP-9などの炎症関連物質の発現を強く促進し、PEPIとHDL/アポ蛋白A-Iとの結合がPEPIの抗炎症作用を抑制するというユニークな制御機構の存在が確認された。酸化LDL添加によりヒト単球由来MφでPEPI mRNA及び蛋白の発現が増加した。ヒト各組織におけるPEPI mRNA・蛋白の分布はubiquitousであるが、大動脈、冠動脈では正常部分よりもプラークshoulderのMφに強く発現することを確認した。ヒトにおけるPEPIの動脈硬化における意義を確認するため、リコンビナントPEPIを用いてマウスを免疫してモノクローナル抗体を作成し、ELISA系の開発を行っている。また、ヒト単球由来MφにおけるPEPIの炎症促進効果は、TNFα、IL-1β、IL-6、MMP-9等に関して確認済みであるが、今後他のサイトカイン、MMPなどに関してもPEPI添加実験を行い、gene chip解析で変動するサイトカインを網羅的に解明する予定である。
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