DNAから転写されるRNAは蛋白をコードするmRNAばかりでなく蛋白をコードしないゲノム領域からも転写される(転写産物はnon-codingRNAと呼ばれる)。ステロイドホルモンによる転写調節において未知のnon-coding RNAがホルモン調節系に関与している可能性がある。このような最近のRNA worldに関する新知見を背景に本研究は(1)ステロイドホルモン応答性のnon-coding RNAをcloningする、(2)そのホルモン応答性と機能を解析する、ことを目的として、本年度は以下の解析を行った。 1)ステロイドホルモン応答性のnon-coding RNAのcloningとステロイド応答性の確認 マウスの骨芽細胞(初代培養系)と乳腺由来細胞(MCF7)をグルココルチコイドあるいはエストラジオール(10^<-7>M)で処理後、H19年度に得られたcloneについて、蛋白をcodeするものを除いて、定量RT-PCR装置により、cycloheximide処理下、ステロイドホルモン応答性を検討した。さらに、Northern blot法で確認した。non-coding RNA候補として21個のcloneを得たが、予想外に偽陽性クローンが多く、Northern blot法で有意に発現が増加したものは1個のみであった。 2)ステロイドホルモン応答性のnon-coding RNAのpromoterのcloningとホルモン応答性の解析。1個のnon-coding RNAをコードする候補遺伝子について、promoter領域を市販のマウスゲノムライブラリーよりcloningし、reporter luciferase geneをつないで、ホルモン応答性を検討し、デキサメタゾン(10^<-7>M)添加でluciferase活性が1.5倍に上昇した。以上の、これまでの研究結果を総合すると、ステロイドホルモン応答性のnon-coding RNAの数は少なく、また、応答性は低くいが、その存在の可能性が示唆された。
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