研究課題
Embryonic stem(ES)細胞は無限増殖能と多能的分化能を併せ持っことから再生医療における有用性が期待されている。我々は臨床応用を目指して、ヒトES細胞に類似した性質を持つことが知られるカニクイザルES細胞を用いて、安全かつ高効率に血管内皮細胞を分化誘導するための技術開発を行った。特に、動物由来因子の混入を排除するためマウス由来細胞との共培養法を避け、また分化効率の低い胚様体形成法だけに頼らない、新規な分化誘導法の開発を目指した。その結果、胚様体形成法と平面培養法を組み合わせることで、無フィーダー環境下で、従来(<2%)よりも格段に高い効率(20〜60%)で血管内皮細胞を分化誘導することに成功した。まず6種類のサイトカイン存在下での3日間の浮遊培養により胚様体を作成し、引き続き約2週間の平面培養を行うことで、我々が「嚢状構造物」と名付けた独特の構造体を作成する。この構造物はその構成細胞のほぼ全てが免疫染色で血管内皮細胞特異的マーカーであるVE-cadherinを発現しており、血管内皮前駆細胞からなる集団であることが確認された。なお嚢状構造物の中には球状細胞が充満するが、諸解析からこれらが造血前駆細胞であることが明らかとなった。嚢状構造物の壁を切開し球状細胞を除去した後に残る細胞を平面培養したところ8〜10回の継代が可能であり、FACS解析でVE-cadherin陽性率が20〜60%に達することが確認された。また血管内皮細胞として機能(コード形成能、アセチル化LDL取込能)と、血管内皮細胞に特異的な機i能蛋白であるvonWillbrand因子やendothelialNO合成酵素の発現も確認された。現在、in vivoでの機能を確認するために免疫不全マウスへの移植実験(大腿動脈結紮実験、腫瘍血管誘導実験、マトリックス内埋込実験)の基礎検討を開始している。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件) 産業財産権 (1件)
Journal of Electrophoresis 51
ページ: 1-8
Development, Growth & Differentiation 48
ページ: 177-188
International Journal of Hematology 84
ページ: 231-237