研究課題
我々は、カニクイザルES細胞を用いて、臨床応用にむけた安全かつ高効率な血管内皮細胞の分化誘導のための技術開発を目指した。その結果、昨年度は、胚様体形成と平面培養を組み合わせた新規な分化誘導法により、無フィーダー環境下で従来よりも高い効率で細胞表面VE-cadherin陽性成熟血管内皮細胞を作成することに成功した。また、従来法では不可能であった継代が8回程度まで可能となった。本年度はこれらの技術をさらに改良して、1)より高い効率で血管内皮細胞を産生する、2)より多くの回数の継代を可能にする、3)in vivoでの機能発現を確認する、ことを目指した。その結果、1)については、細胞表面VE-cadherin発現を指標としたソーティングを行うことで、VE-cadherin陰性分画も血管内皮細胞としての特徴を全て有しおり、100%の効率で血管内皮細胞に分化していることが確認された。さらに、VE-cadherin陽性分画は、その後の培養を経ても90%以上のVE-cadherin発現を維持したまま増殖継代できることが確認され、高純度の継代可能な成熟血管内皮細胞を得ることができたと言える。また、2)に関しては、我々の方法により作成されたES細胞由来血管内皮細胞が8回程度の継代の後に「ストレス依存性老化」を起こして増殖停止することが明らかになったことから、細胞培養におけるストレスを減弱する方法につき検討したが、現時点では「ストレス依存性老化」そのものは止められないまでも、継代法の細部を工夫して10継代まで可能となった。3)については、ゲル状の細胞外マトリクス中にES細胞由来血管内皮細胞を封入したものを免疫不全マウスの皮下に移植し、一定時間の経過後に尾静脈から蛍光色素を注入することで体循環系との連絡の有無を確認する方法で、マウス体内での血管形成を確認できた。
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Journal of Electrophoresis 51
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