研究概要 |
母乳にはマクロファージ、リンパ球、形質細胞、導管上皮細胞などの細胞成分があり、乳児への感染防御の働きが示唆されている。この細胞成分は、個体あるいは、母体の状態によって割合が大きく異なることが知られている。 一方、細胞内には細胞種に特有の、20-25塩基ほどの1本鎖RNAで、他の遺伝子の発現を調節する機能を有するmiRNAが存在する。母乳細胞にどのようなmiRNAが存在し,母体の状態に関連した、診断が可能であるか興味が持たれる。 ここでは褥婦の母乳中に存在するmiRNAを調べるために、褥婦の末梢血単核球のmiRNAと母乳細胞のmiRNAを比較することにより母乳中に有意に存在するmiRNAの意義を検討した。母乳および末梢血から細胞を分離し、存在するmiRNAをMicroarrayを用いて調べた。その結果、let-7,miR200,miR30,miR20が母乳細胞で高いシグナルを示し、末梢血単核球に比較して、母乳中で、2倍以上高く発現していることが判った。さらに、これまで組織特異的なmiRNAとして報告されている、miR200、miR107、miR141が高いシグナルを示していることが明らかになった。これらのmiRNAは免疫系の細胞では、発現が低いことが知られており、免疫系以外の母乳細胞由来であることが示唆されている。今後、これらの母乳細胞特異的なmiRNAに着目し、RT-PCR等により、発現の確認を行うと共に、発現量の個体差等を調べることにより、母体の新しい診断法開発の可能性について、検討していく予定である。
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