研究概要 |
東大病院PICUの2ベッドにおける、主として先天性心疾患術後の心拍変動、並びに今年度は血圧変動のデータも含め計測し解析した。心拍変動データは、34週間分(3年間で延べ100週間)にわたって計測・集積した。データの計測・集積に関するモニタリング・システムは安定していた。 術直後の患者は深鎮静および人工呼吸管理により、低周波数領域パワー(LF),高周波数領域パワー(HF)ともに振幅が極めて小さい値で推移した。循環動態の安定と平行して鎮静が漸次軽減され、それに伴い心拍変動が回復しエントロピー、LF、HFスペクトルとも生理的な範囲を推移した。 術後管理下では、小さな心拍数の変動やノイズによってもLF,HFは大きく変動した。 循環動態の急変の伴うLF,HF振幅の変動は、処置に伴うノイズの混入との判別は困難であった。また、急変に先行する心拍変動、エントロピー。LF,HFの先行する明らかな変化は認めなかった。血液ガスや生化学的データとの明らかな相関関係も認めなかった。 結論:深鎮静の影響を強く受ける心臓手術術後患者の血行動態安定化を見極める指標としての心拍変動指標の有用性は、必ずしも高いとは評価出来なかった。しかし、深鎮静を離脱した患者の循環動態の評価にはある程度、心拍変動は有用と考えられた。また、PICU内では意識障害患者における脳幹機能を反映する自律神経機能の定量的評価として、心拍変動解析の応用が期待された。
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