研究概要 |
腎前駆細胞の培養法の開発 WT-1遺伝子座に緑色蛍光遺伝子EGFPがノックインされたES細胞を樹立した。このES細胞による胚様体の細胞をコラゲナー用いて単離し、胎生13日から胎生16日までの後腎とコラーゲンゲルによる3次元共培養を数日行いEGEPの発現を示す細胞を得ることができた。このEGFPの発現を示す細胞をcell sortingにより分取しマウス腎皮膜下に移植して、2週後に腎組織に分化するか組織学的に解析した。しかしながら、糸球体あるいは尿細管様構造は認められず、形態学的に腎組織と考えられる組織は形成されなかった。EGFPの発現を示す細胞が腎前駆細胞であるならば、どのような分化段階にあるのか調べた。 WT-1、Sall-1、Eya-1、Lim-1、Pax-2などの腎発生初期に働く遣伝子群の発現がみられるのみなのか、それとも、かなり分化が進んだ時期のWnt-4、nephrin、synaptopodin、aquaporin-1、aquaporin-2等の腎マーカー遺伝子がすでに発現しているのか、RT-PCRにより調べたところ、WT-1、Pax-2の発現が認められたが、他の遺伝子の発現は認められなかった。この結果腎発生初期に相当する腎前駆細胞の可能性が考えられた。次いで、腎前駆細胞の形質を失わずに継代増殖できる培養法を開発する目的で、Atalaらのウシ後腎細胞の培養法(Lanza RP, et al: Nature Biotech 20:689-696,2002)を参考にして試みたが、途中でWT-1、Pax-2の発現はoffになってしまい、腎前駆細胞の形質を失わずに継代増殖できる培養法を研究期間内に開発することはできなかった。 腎前駆細胞の分化能の解析 EGFPの発現を示す細胞を4週齢のマウス腎皮質に注入し、4週間後に腎臓を摘出して組織学的解析を行った。 この解析では、X-gal染色により青色に染まる細胞は検出されず、EGFPの発現を示す細胞は、糸球体上皮細胞、血管内皮細胞、尿細管細胞などに分化する前に死滅したと考えられた。 腎前駆細胞シートを用いたネフロンの再構築および腎組織再生の検討 腎前駆細胞の形質を失わずに継代増殖できる培養法を開発できなかったので、この検討は実施できなかった。
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