遺伝性血液疾患に対する現在の有効な治療方法として造血幹細胞移植があげられるが、HLA適合ドナー提供者が少ないこと、また放射線照射あるいは化学療法による移植前処置による副作用が問題とされている。胎児期に放射線、科学療法などの前処置を行わずにHLAが適合していないドナー細胞を移植しても免疫学的寛容が獲得されることが理論上可能であり、従来の骨髄移植に伴う危険性を少なくすることが可能であるだけではなく、HLA適合に関わらず多くのドナー細胞が移植に利用することが可能となることが期待される。 本研究は、胎児期の移植免疫学あるいは発生・分化の基礎的な研究を行い、それを基にした胎児期の移植治療の開発と再生医療への応用を目的とする。1.胎児移植治療モデルの作成胎児移植治療モデルに対し、侵襲の少ないプロトコールを用いた細胞移植によりドナーキメリズムの増幅が可能であることを証明する。また、このプロトコールでは、通常の成人マウスでは移植土治療の効果が得られないことも確かめ、侵襲の少ないプロトコールであることを証明する。疾患マウスを用いて胎児幹細胞移植治療を行い、これらの治療法により疾患の症状の治療効果について検討を行う。2.免疫トレランスのメカニズムの解明マウス胎児への細胞移植後、免疫組織化学を用いた組織染色を行い、移植細胞の胎児への生着率を検討する。3.治療効果が十分得られるレベルのキメリズムの獲得が可能な治療法の開発ドナー細胞が正着したキメラマウスを用いて、その疾患マウスに出現する症状の改善の有無と程度について検討を行う。また、ドナー細胞生着率と症状改善の程度に関しての検討も同時に行う。
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