今年度は、新たに患者およびその家族の27例と健常者1例からBリンパ芽球細胞株を樹立し、昨年度からの樹立したリンパ芽球の合計は55株となった。その中の15例の原因不明の発達障害児と7名の健常者のリンパ芽球について、モナストロール処理による単極性染色体整列異常の解析をDAPI染色法により行った。各検体について250細胞以上解析した結果、健常者の染色体整列異常は12%であったが、臨床所見の異なる2例の小頭症(-5SD)には、整列異常が健常者の約2〜3倍(23.4%と30.7%)と高率に見られた。さらに、他の未知の発達障害児のリンパ芽球の中にも、整列異常が健常者の2倍以上ものが存在した。以上のより、原因不明の発達障害(先天性疾患)の中には、染色体整列異常が見られる疾患が少なからず存在することが明らかになった。 本年度の解析により、モナストロールを用いた染色体整列異常検索法は、未知の発達障害の診断法として有用性が高いことが判明した。近年、知的障害を伴う発達障害に、NIPBLなどの染色体サイクルに係わるタンパク質の異常が報告されている。従ってモナストロール処理を用いた本方法は、未知の発達障害が染色体サイクル(分裂中期の姉妹染色分体の整列)に関連するタンパク質の異常により発症した可能を示唆する1つの指標であると考えられる。今後さらに症例数を増やし、臨床症状と整列異常の関連を解析することで、本方法の早期診断法としての有用性をさらに検証する予定である。
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