本研究の最終目標は、脳の主要な細胞環境分子であるコンドロイチン硫酸糖鎖に由来する生理活性オリゴ糖を利用して、新生児脳障害の治療を行うことである。この目標に向かって、本年度は、以下の成果をあげた。 1.新生児脳障害モデルマウスの作製 私達は新生児脳障害モデルラットを作製して使用してきた。今回、活性分子による治療効果を、動物の成長後に、行動実験により検定するため、ラットに比べて行動実験が容易なマウスで障害モデルの作製を試みた。モデルラットの作製に準じて、生後7日齢マウスの右総頸動脈を結紮後、8%酸素負荷を行った。48時間後にTTC染色により脳損傷を観察したところ、低酸素負荷はラットに比べて短時間(15分)でよいことがわかった。また、このモデルマウスを用いて、サイトカイン受容体の活性阻害抗体による治療効果も確認できた。 2.低酸素虚血神経変性の培養モデル作製 動物実験の代替法開発および脳障害修復機序研究のためのシステム構築を目指して、低酸素虚血神経変性培養モデルの作製を試みた。神経細胞をアストロサイト上で2週間培養後、無グルコース培地に移し、さらに酸素分圧を1%に低下させたところ、細胞死が誘発できた。今後は、このニューロングリア共培養系を用いて、さらに適切な低酸素条件を見つけ、コンドロイチン硫酸糖鎖由来活性オリゴ糖の活性比較や神経保護作用の機序を解析する。
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