我々は、遺伝性対側性色素異常症(DSH)の原因遺伝子がADAR1遺伝子であることをpositional cloning法を用いて2003年に明らかにした。しかし、ADAR1遺伝子変異がなぜDSHの臨床症状を引き起こすかという点については、現在に至るまで全く解明されていない。そこで、病態解明のために以下のことを行なった。 (1)Notch signal pathwayが表皮メラノサイトの維持に大きく関わっているとの考えを作業仮設として、Notch signal pathwayで機能する分子にA-to-I RNA editingが起こっているかどうかを解析し、DSHの臨床症状形成とNotch signal pathwayとの関わりを明らかにために、NCBIのデータ・ベースよりNotchシグナル伝達経路に関係する分子のcDNAと genomic DNA配列を取得し、A-to-I RNA editingが起こっているかどうかを検索した。しかし、いろいろな試行錯誤にもかかわらず、editingが起こっている分子、あるいは部位を見出す事ができなかった。 (2)変異ADAR1のトランスジェニックマウスを作成する目的で、正常ヒトADAR1 cDNAにpoint mutationを加えた変異ADAR1cDNA発現ベクターコンストラクトについては作成することができた。 (3)新たなDSH患者症例を集積し、ADAR1遺伝子の変異検索により3種類の新規遺伝子変異を同定後に臨床症状との関連性を検討したが、明らかな相関関係は認めなかった。
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