研究課題
アルツハイマー病(AD)の原因とされているAβは凝集しやすいペプチドである。このAβ凝集の逆の現象である離散に注目した。何故ならAβワクチン療法により老人斑が消失することにより、Aβの凝集過程が可逆的であることが示されたからである。我々の検討(In vitro Aβ sink assay)により試験管の中においても、Aβの離散過程があることが判明し、より凝集能の高いAβ42(42アミノ酸)がAβ40(40アミノ酸)に比べ離散しにくいことが判明した(Sato et al. Neurobiology of Disease (2006))。さらにcurcuminが離散を増強させることを既報の通り、In vitro Aβ sink assayにおいてAβ ELISAを用いて定量的に示し報告した。しかし、curcuminによって増加した可溶性Aβがどのような性質を持つものなのか明らかでなかった。本年度、我々はIn vitro sink Aβ assayにおいてゲルろ過を用いてcurcuminにより増加した可溶性Aβは高分子オリゴマーではなく低分子オリゴマー(16K以下)ないしモノマーであることを見出した。高分子オリゴマーは神経毒性がある為、この結果はcurcuminの臨床応用を支持する。さらにcurcuminが脳内で凝集Aβ(=老人斑)に離散を働きかけた場合、脳内の可溶性Aβは増加してしまうと考えられる。そうした場合curcuminは脳内からの可溶性Aβのクリアランスを増やすことが出来るかを検討した。脳室内にAβを投与し認知機能を障害させるモデル(Aβ injection model)においてcurcuminは脳内のAβ蓄積を抑制することが判明し、Aβクリアランスを増大させている可能性が示唆された。ADの治療を考える上でAβ離散およびAβクリアランスの検討は今後重要性を増すと考えられた。
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Brain Res. 1130号
ページ: 181-187
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Geriatrics and Gerontology International (in press)