現在考えられている抗うつ薬の作用機序の仮説では、うつ病が抗うつ薬を服用しても臨床効果が2週間〜4週間経たないと軽快しない経時的解離は説明できない。抗うつ薬の作用を受容体だけで説明しようと試みる現在までの仮説では、抗うつ薬の作用機序の根本には迫れず新たな発想が必要となる。そこで受容体以外にも抗うつ薬が作用する可能性があるかを本応募研究ではプロテオミクス的手法を用い網羅的に検索し、分子生物学的方法を用いin vivoで抗うつ薬と結合するかを確認することを目的とする。 アミド基を構1造中に持つ抗うつ薬であるSNRIであるミルナシプランをアフィニティーカラムに結合させる。さらに、ラット大脳のホモジェナイズしたサンプルを添加し、薬物に蛋白質を結合させる。高度濃度のアフィニティーカラムに結合させた薬物を添加し、分離抽出した蛋白質をCy3蛍光標識する。抗うつ薬を結合させていない対照のアフィニティーカラムからの抽出蛋白質をCy5で蛍光標識し、両サンプルを混合後、一枚の二次元電気泳動ゲルを施行する。蛋白質の解析には、2D解析システム・バリアブル・イメージアラナイザーを用いる。2D解析システム・バリアブル・イメージアラナイザーでは、Cy3、Cy5の蛍光波長の差からレーザーの波長を変えて測定することで各蛋白質のスポットごとの定量差を比較できる。従って、この方法で抗うつ薬結合蛋白質は、抗うつ薬結合アフィニティーカラムにて抽出した蛋白質が、対照とを比較し増加していることとなる。次に、二次元電気泳動にて抗うつ薬結合蛋白質と検出した蛋白質が何であるのかの同定をするために質量分析機Ion-trap型ESI-MSを使用し、質量分析を行い、蛋白質が何であるかを同定した。
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