研究概要 |
プロテオミクス的手法を用い抗うつ薬結合蛋白質を同定することを目的とする。昨年までSSRIであるミルナシプラン結合蛋白質を同定することを目的に、アミド基に結合するアフィニティーカラムを作成し、ラット大脳のホモジェナイズしたサンプルを添加し、ミルナシプランに蛋白質を結合させた。アフィニティーカラムに結合させた結合蛋白質を高濃度のミルナシプランを添加し、分離抽出した結合蛋白質をCy3蛍光標識した。抗うつ薬を結合させていない対照のアフィニティーカラムからの抽出蛋白質をCy5で蛍光標識し、両サンプルを混合後、一枚の二次元電気泳動ゲルを施行した。蛋白質の解析には、2D解析システム・バリアブル・イメージアラナイザーを用い解析し、Cy3、Cy5の蛍光波長の差からレーザーの波長を変えて測定することで各蛋白質のスポットごとの定量差を比較し、さらに質量分析を行った。この方法で、現在抗うつ薬結合蛋白質を十数個同定した。 このプロテオミクス手法を用いて同定した抗うつ薬結合蛋白質の一つが、dynamin-1であることを突きとめた。Dynamin Iは脳にのみ存在している。また、プレシナプスでの神経伝達物質分泌に関与している重要な蛋白質であることが、近年の研究で証明された。Dynamin Iは開口分泌時のカルシウムのセンサーの働きをしている。dynamin-1はGTPaseであるので、GTPase活性を測定することで、薬物がdynamin-1の機能に関与するかを検討し、Sertraline,fluvoxamineなどがdynamin-1のGTPase活性を著名に減少させたことを報告した。
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