統合失調症(精神分裂病)は、人口の約1%を冒す重症の精神疾患で、日本国内の全科入院患者の約15%を占め、その社会経済的影響は計り知れない。統合失調症は特有の症状によって規定される多因子性の症候群であり、家族集積性が高く、遺伝要因と環境要因の両方によって発症すると考えられているが、その発症機序はいまだ不明のままである。microRNAは、近年見出されて注目を浴びている21-23塩基という比較的小さなNon-coding RNA(生体内で発現するRNAのうち、タンパクをコードしないRNAの総称)であり、時空間特異的に生体内で発現し、標的RNAの翻訳抑制を行うとされている。その翻訳抑制は、RNAi (RNA interference:約21塩基のRNAが配列特異的に標的RNAの分解を引き起こす分子機構)と非常によく似た機構であり、発生、アポトーシス、アミノ酸代謝などを調節することで知られている。特に神経系では、発生における神経分化や記憶・学習に関与していることが報告されている。 本年度は統合失調症300例と健常者300例による一次スクリーニングにおいて統合失調症との関連が認められた4つのSNPについて2次スクリーニングとして統合失調症400例と健常者400例における検討を行った。その結果、3つのSNPにおいては統合失調症との関連は認められなかったが、1つのSNPにおいては統合失調症との関連が認められた。このSNPは成熟microRNAから約100塩基離れていることから、成熟microRNA上またはさらに近傍に関連するSNPがある可能性がある。今後、シークエンス解析によって新たなSNPを探索することと、躁うつ病やうつ病における関連について検討していく必要がある。
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