(1)CRP付加人工血管のラットへの移植実験 ゼラチンコート人工血管片に1000μg/mlのCRP溶液を塗布し、ラット皮下に移植した。移植後2週間まで経時的に観察した。生理食塩液を塗布した対照群と比較し、移植局所へのマクロファージの著明な集簇と、それに引き続く線維芽細胞の増生を認めた。感染局所における細菌の貪食を担う、マクロファージの集簇を促進することで、局所感染を制御できる可能性が示唆された。至適なCRP付加量の検討、CRPの徐放性の評価継続中である。 (2)CRP付加人工血管の感染局所への移植実験 上記人工血管片をビーグル犬皮下に移植し、閉創直前に局所にS. aureusを接種した。移植後2週間まで経時的に観察した。摘出した人工血管片の洗浄液を培養し、菌数をカウントして感染の程度を評価した。CRP溶液塗布群と生理食塩液を塗布した対照群いずれも局所の膿瘍形成、炎症所見が著明であり、培養にて多数のS. aureusを検出した。局所感染の抑制の傾向は認められなかった。CRP単独付加による感染の制御は困難と考えられた。 (3)バンコマイシン徐放性人工血管の開発に向けて 人工血管の抗感染性を高めるため、CRPとバンコマイシンを併用するべく、バンコマイシンを保持し徐放する性質を持ったゲルを試作し徐放効果について評価中である。
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