研究概要 |
BK5.ErbB2トランスジェニックマス(以下Tgマウス)はErbB2過剰発現し,3ヶ月でほぼ100%に高分化型胆嚢癌を発症する.本Tgマウスにおける胆嚢癌発生のメカニズムについて,ErbB2シグナル伝達機構の活性化の点より検討するために,Tgマウス胆嚢癌における粘液糖蛋白の発現プロフィールを出生後より経時的変化を解析し,さらにMuc4とerbB2の複合体形成についても検討した.生後2,4,8,12週のTg胆嚢について胆嚢癌の発生頻度,ムチン遺伝子プロフィール(PCR),Muc4発現(PCR,インサイツハイブリダイゼーション,免疫組織化学),Muc4とerbB2の複合体形成(免疫沈降)について解析を行い,野生マウスと比較した.またTgマウス胆嚢の癌部および非癌部におけるMuc4発現の比較(PCR,免疫組織化学),胆嚢癌部とerbB2の過剰発現が認められる気管,食道,前胃におけるMuc4発現の比較(免疫組織化学)についても検討した.本Tgマウスにおける胆嚢癌の発生頻度は2週(50%),4週(43%),8週(67%),12週(100%)であった.12週Tg胆嚢癌ではWtに比して,Muc1,Muc3の転写レベルは低下していたが.Muc4は799-1732%まで増加していた.インサイツハイブリダイゼーション・免疫組織化学の解析よりMuc4mRNAおよび蛋白はTgマウス胆嚢癌の癌上皮に顕著に発現していた.また免疫組織化学よりMuc4はerbB2と同一癌上皮部位に発現していた.免疫沈降の結果よりMuc4はerbB2と複合体を形成しており,Wtに比してTgマウス胆嚢癌ではerbB2のチロシンリン酸化は顕著に亢進していた.Tgマウス胆嚢癌におけるMuc4発現強度は2週を除いて顕著な発現を示していた.2週Tg胆嚢においても,癌部は非癌部に比してその発現は有意に増加していた.胆嚢癌部に比して,気管,食道,前胃におけるMuc4発現は微弱または陰性であった.本TgマウスにおけるMuc4発現は,胆嚢癌部位のみに過剰発現が認められたこと,癌部は非癌部に比して顕著な発現が認められたこと,出生早期より高齢の胆嚢癌において顕著な発現が認められたこと,erbB2と複合体を形成することより,そのチロシンリン酸化を亢進することより考えて.胆嚢発癌またその進展にかかわるerbB2シグナル伝達機構の活性化に重要な役割を演じていることが推測された.次年度は、本マウス胆嚢癌に対するイムノトキシン療法の抗腫瘍効果について解析する予定である。
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