[研究の目的と背景] 本研究の目的は、腫瘍発生モデルマウスにおけるJNK-MMP系の活性制御機構および細胞外基質破壊・腫瘍進展に果たす役割を解明し、有効な治療標的を同定することである。より具体的には、 1.腫瘍発生マウスにおける癌発生の過程において、どの時期にどの細胞においてJNK-MMP系の活性化が見られるのかを明らかにする。 2.腫瘍発生マウスにおいて腫瘍細胞が産生し、宿主細胞のJNKを活性化する因子を同定する。 3.JNK阻害、および同定されたJNK活性化因子の阻害により腫瘍発生マウスにおける腫瘍進展が抑制されるか、さらに生命予後が改善されるかを検証する。 [平成18年度の結果] 腫瘍発生進展の実験系として、ラットインスリンプロモーター(RIP)によりSV40 early regionを強制発現させたRip-Tagマウスを実験系として用いた。Rip-Tag膵島腫瘍発生の各段階で腫瘍および周囲組織を摘出し、活性型JNKおよびMMP-9を免疫組織染色法により検出した。その結果、活性型JNKは、腫瘍細胞と隣接する宿主間質細胞に主に局在していた。同様に、隣接する宿主間質細胞にMMP-9発現も認められた。一方、ビーズアレイ法で定量解析された摘出組織中の活性化型JNKの総量は、腫瘍発生進展の経過中有意な変動を示さなかった。また、ビーズアレイ法で摘出組織中のサイトカイン23種を網羅的に解析した結果、腫瘍発生の過程で有意に増加するものが同定された。次年度は、Rip-Tagマウスに特異的JNK阻害剤(SP600125)を投与し、vivoの腫瘍形成におけるJNKの役割を検討する計画である。
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