研究課題
小腸は近年の免疫抑制剤(カルシノイリンインヒビッターのFK506、CyA、核酸代謝阻害剤のMMFなど)の発達に加え、種々のモノクローナル抗体(OKT3、抗CD25抗体、抗IL2-R抗体など)やATGやALGなどによるinduction therapyの導入により移植可能な臓器の1つになってきた。しかし他臓器に比べるとその成績はいまだ満足できるものでなく、世界で2005年3月までに約1300例が国際登録されているが、1年生存率は70-75%、2年生存率が60%、5年生存率が50%という現状である。その原因として小腸は粘膜固有層やリンパ節などにリンパ球や単球や樹状細胞などGut Associated Lymphoid Tissue(GALT)と呼ばれる免疫担当細胞の宝庫であり免疫原性が強いため、拒絶反応やGVHDが起きやすいという問題がある。そのため強い免疫抑制が必要となり、感染症が起こりやすいということが挙げられる。また免疫抑制剤の副作用である腎毒性、肝毒性、高血圧、耐糖能異常、中枢神経障害なども長期大量使用では大きな問題点となる。これらの問題点を克服し小腸移植を短腸症候群の治療手段として定着させるには免疫寛容の誘導しか方法がない。肝臓移植では移植後長期生着例では計画的に、またEBウイルスの感染などを契機に非計画的に、免疫抑制剤から離脱できる症例もあり、免疫寛容の状態が得られることが期待できるが、小腸ではそういった可能性は皆無であり、導入の時点から免疫寛容を誘導する手段をこうじなければならない。この研究では生体小腸移植をターゲットにして、実質臓器移植にとって斬新な方法である「血管茎付き胸腺移植」という方法で、ドナー特異的な免疫寛容状態にした状態で、胸腺と同じドナーからの小腸移植を行い、免疫抑制剤なしで生着する方法を確立することが目的である。この研究を進めるにあたり、ミニブタから胸腺を摘出して血管付きグラフトとして採取。グラフトの胸腺動静脈をレシピエントの頚動静脈にそれぞれ端側吻合してみた。10頭行ったが、血管が極めてほそくperfusionが不良であった。縦隔の内胸動脈をグラフトにつけて採取し、同様につないでみたがperfusion不良であった。胸腺を還流する血管が極めて細くしかも多様なため、手技的に胸腺を血管茎付きグラフトとして移植するのは困難であることが判明し、更なる研究の遂行は不可能であった。
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