研究概要 |
今回我々は成熟個体から幹細胞を採取し膵β細胞へ分化誘導した後、自家移植する"自己完結型膵β細胞移植"という新たな治療法を確立すべく基礎実験として本研究を行った。ラットの門脈遮断葉から培養・増殖可能な前駆細胞である肝上皮細胞(liver epitherial cell : LEC)を分離した。LECは肝細胞・胆管細胞のどちらにも分化可能な細胞である。肝胆膵は分化の過程で最も近いため、肝由来のLECは膵β細胞へ分化可能ではないかと考えた。まず、LECにおける膵関連遺伝子である、PDX-1,Isl-1,Nkx6.1,Ngn3,NeuroD, GLP-1R, Insulin I, II, Glucagon, K-ATPのmRNA発現を検索した結果Isl-1のみ発現を認めた。次に移植後早期に遭遇する虚血・低酸素に対する耐性能を検討した。2%O2,5%CO2下に培養した結果、ラット成熟肝細胞は時間とともにviabilityが低下したがLECは18時間経過しても98%生存し、低酸素下でも増殖した。β細胞への分化にはPDX-1とIsl-1の共発現が必要であるため、PDX-1遺伝子のtransfectionを行った。FuGENE6を用いリポフェクション法でマウスPDX-1遺伝子をtransfectさせ、transient expressionにおける形質転換の有無を検討した。導入の有無はPDX-1およびplasmidが共搭載しているFLAGに対する蛍光免疫染色で確認した。PDX-1陽性細胞はFLAG陽性でありtransfectionによるPDX-1の発現を確認できた。PDX-1はmRNA, Western blottingでも確認できた。インスリン抗体による免疫染色ではFLAG陽性細胞に一致してインスリン陽性であったが、残念ながらWestern blottingやELISAでは確認できなかた。Transient expressionによる蛋白発現は非常にわずかであるため、今後はstable expressionを作製し検討することが必要と考えられた。
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