多くの腫瘍の発生機構や転移・増殖の分子メカニズムの解明が試みられ、これら機構に基づく分子標的治療薬の開発が企画されている。本研究では、比較的珍しいがborderline malignancyの性格を有し、場合によっては生命予後に関連し、可能であれば外科治療以外の低侵襲治療の開発が期待されている神経原性腫瘍-特に、神経鞘腫とその悪性型である悪性神経鞘腫の増殖分子機構を明らかにすることが目的である。 1.まず、同系統の腫瘍であるGISTや平滑筋腫、平滑筋肉腫との間でタンパク発現の差を検討した。一般の、プロテオーム解析では原因の可能性があるタンパク質は同定できなかった。 2.リン酸化チロシンに特異的な抗体で免疫沈降した後、MALDIにてタンパク質の同定を行うと、erythrocyte membrane protein band 4.1 like-2(4.1G)タンパク質が特異的に神経鞘腫でリン酸化されていた。 3.4.1Gタンパク質のリン酸化は頭蓋内腫瘍(神経鞘腫)、頸部神経鞘腫、消化管神経鞘腫何れにも観察され、神経鞘腫に特異的であることが示唆された。 4.4.1Gタンパク質は神経線維腫症(NF-2)の原因遺伝子であるmerlinと構造上類似しており、弛緩原因遺伝子である可能性が示唆された。 現在、神経鞘腫のcell lineを用いて、4.1Gタンパク質の機能解析を行うと共に4.1Gタンパク質と共沈するタンパク質で、4.1Gタンパク質をリン酸化するものを検索中である。
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