研究課題/領域番号 |
18659385
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
川中 博文 九州大学, 大学病院, 助手 (10363334)
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研究分担者 |
前原 喜彦 九州大学, 大学院医学研究院, 教授 (80165662)
田上 和夫 九州大学, 大学病院, 助教授 (40294920)
小西 晃造 九州大学, 大学院医学研究院, 寄付講座教員 (90380641)
山口 将平 九州大学, 大学院医学研究院, 研究員 (90419606)
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キーワード | 肝硬変症 / 門脈亢進症性胃症 / MAPK / peroxynitrite / nitration / radical scavenger |
研究概要 |
【目的】門脈圧亢進症においては、食道胃静脈瘤のみならず、門脈圧亢進症性胃症(Portal hypertensive gastropathy : PHG)といわれる特徴的な胃粘膜病変が存在し、肝硬変症患者における発現頻度は80%で、その10〜30%に出血を起こすといわれており、慢性肝炎・肝硬変症患者の日常臨床において見逃すことのできない病態である。そこで、本研究ではPHGの分子機序を解明し、新しい治療戦略へ展開することを目的としている。具体的には、胃粘膜上皮のMAPKカスケードの異常とNOシグナルの関連について検討した。 【方法および結果】(1)正常ラット胃粘膜に比べ、PHGラットにおいては、H_2O_2および過酸化脂質(lipid peroxide)が有意に増加しており、PHGにおいては胃粘膜の低酸素化や過剰なNO産生があるため、ROS(reactive oxygen species)やRNS(reactive nitrogen species)が増えていることが判明した。(2)PHGにおける過剰なNOは、非常に反応性に富むperoxynitrite(NO3-)となり、tyrosine残基をnitration化し蛋白の活性を修飾している可能性がある。そこで、Coimmunoprecipitationを用いたWestern blotting(IP ; nitrotyrosine, IB : nitrotyrosine or ERK)にてERKとperoxinitriteの結合を検討したところ、PHGにおいてnitration化されたERK蛋白が有意に増加していることが明らかとなった。 【まとめ】PHGにおける胃粘膜においては、過剰に存在するNOにより胃粘膜上皮の細胞増殖の重要なシグナルであるERKがnitration化されており、これがPHGにおけるMAPKカスケード障害の一因である可能性が判明した。 【平成19年度の展開】ERKのnitration化の制御による門脈圧亢進症性胃症(PHG)治療への展開 ROSやRNSに対するラジカルスカベンジャーを用い、ERKのnitrationを介したMAPKカスケードの異常を是正することで、PHGにおける胃粘膜の脆弱性を改善できるか、否か検討する。
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