本年度は、昨年度までの実験結果をもとに、ビーグル犬を用いて本格的な実験を開始した。まず、ビーグル犬の背部皮下を剥離し、体外式心臓用ペースメーカーと刺激電極を用いて広背筋と肋間筋で、筋肉刺激モデルを確立した。 広背筋刺激では収縮振幅が小さく、また筋肉自体の面積が広いためゼラチンシートを固定した場合、全て一つの筋に固定される形になってしまうため、ゼラチンシートに短縮される刺激が加わるのみで、牽引される動的刺激が加えられなかった。そこで、ゼラチンシートの一辺を肋骨に接する結合組織に固定し、他方をその肋骨より離れた肋間筋もしくは前鋸筋に固定し、その筋組織を電気刺激することで、有効にゼラチンシートに牽引刺激が加えられるモデルを確立した。 ビーグル犬の背部皮下を剥離し、両側胸部へ剥離を進め、肋骨と肋間筋を同定し、そこへ肋間をまたぐように左右一枚ずつゼラチンシートを固定した。左側の肋間筋には刺激電極をさらに縫着し、ヒト用植え込み型心臓ペースメーカーに接続し、刺激を開始した。電気刺激の条件は、通電時間10ミリ秒、電圧7.5V、通電回数60回/分とし、ペースメーカー本体も離れた皮下に埋没した。右側のシートは対照群として、電気刺激は行わなかった。植え込み後一ヶ月で標本を周囲組織とともに摘出し、病理検査に提出した。現在、利用できるペースメーカー本体の個数が限られているため、継続的に実験を行い、病理組織学的検討を行っている。
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