研究概要 |
センチネルリンパ節の概念が提唱され,乳癌や悪性黒色腫などに対する手術で,センチネルリンパ節の概念がリンパ節郭清の省略に臨床応用されている.私どもの成果も含めて肺癌にもセンチネルリンパ節が存在することが明らかになっている.一方,肺癌で縦隔リンパ節まで転移がある場合の5年生存率は30%未満であり,ガイドラインによると,N2症例の外科治療の意義は確立されておらず手術を勧めるだけの根拠が明確でないとして「グレードC」に位置づけられている.そこでこの研究では転移が起こる可能性が最も高いセンチネルリンパ節をターゲットとして局所に高濃度の抗がん剤を,副作用を発生させないように,選択的に投与する方法の開発を目指した.温度感受性リポソームはある特定の温度により壊れるため,内部の薬物を放出することが可能である.磁性粒子に磁場を印加すると発熱するので,温度感受性リポソーム内部に磁性粒子を加えて,温度コントロールに使用する方法を考えた.この方法を用いると抗がん剤の放出を時間的・空間的にコントロール可能になり,センチネルリンパ節に選択的に高濃度の抗がん剤を投与することが可能になる.そしてリポソームを中心に研究を進めたが,リポソームよりも高分子化合物のポリマーの方が生体内で安定していることが明らかとなった.そのため現在慶応大学工学部の研究室と高分子化合物を用いた適度な温度で抗がん剤の放出が可能となる温度感受性システムを研究中である.
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