研究概要 |
自然免疫とは、微生物感染時に迅速に機能する免疫応答機構であり、昆虫から哺乳類まで進化上幅広く存在している。最近外来微生物に共通する分子構造を認識し、細胞内シグナル伝達系を活性化するToll様受容体(TLR)と呼ばれる一連の膜蛋白質の構造と機能が明らかとなってきた(Nat Immunol 2;675-680,2001)。TLR familyのうちTLR4はグラム陰性桿菌の外膜に存在するリポ多糖類(LPS)にと結合し、細胞内シグナル伝達を活性化する事が知られている(Science 282:2085-88,1998)。これ以外にTLR4はネクローシスによる細胞死に伴う炎症性反応(TNF-alpha,IL-1beta,iNOS等の発現)に関与する事が知られている(J Immunol 166;7128-35,2001)。そこで本研究では脳虚血・再灌流障害により引き起こされる炎症反応にTLR4が関与しているかどうかを検討した。その結果、TLR4 knock-out(TLR4KO)マウスとそのwild type(Wt)マウスで脳虚血病変に差があるかどうかを中大脳動脈永久閉塞モデルと一過性閉塞モデルとで検討した。その結果、永久閉塞モデルでも一過性閉塞モデルでもTLR4KOマウスで梗塞量の減少が認められた。次いでWtマウスに致死量の放射線を照射後、TLR4KOマウスの骨髄を移植すると、Wtマウスの骨髄を移植する場合に比して有意に梗塞量の減少が認められた。更に初代培養神経細胞に4時間の低酸素負荷を与えた後、マイクログリアと共培養すると、TLR4KOマウス由来のマイクログリアと共培養した方がWtマウス由来のマイクログリアと共培養した場合より、優位に神経細胞障害が軽減した。従って脳虚血障害機構に骨髄由来の単球・マクロファージが密接に関与すると考えられた。
|