研究概要 |
血管老化とも言うべき動脈硬化は、心筋梗塞や脳血管障害など日本人の死因の半数近くを占める疾患の主たる原因病態であり、血管新生の促進効果及び動脈硬化の進行抑制効果を有する新しい治療法の開発は動脈硬化が背景にある脳梗塞も含めた虚血性疾患の治療と予防にとって有意義と言える。 われわれはこの治療に、血中半減期の短い脱シアル下エリスロポイエチン(asialo-Epo)と繊維芽細胞増殖因子(FGF)を用いた治療実験を行っている。現在までの知見として、 ラット中大脳動脈閉塞モデルにおいてasialo-Epo,Epoを腹腔内投与すると、両者の投与でともに、同等の脳梗塞巣の減少および神経症状の改善を認めた。一方で、Epoの投与では抹消血液中でのヘモグロビン、ヘマトクリット値の上昇を認めたが、asailo-Epoの投与では、両者の上昇は認めず、多血症の発生は認めなかった。このことは脳梗塞の臨床治療における安全性を担保する所見と考えられた。 一方、FGF遺伝子を導入した骨髄幹細胞を、ラット中大脳動脈閉塞モデル脳内に投与することにより、脳梗塞巣の減少および、神経脱落症状の改善を認めた。またこの細胞を移植することにより、脳梗塞巣周囲でのFGF蛋白の発現が長期間に渡って観察できた。 今後は両者の併用により、脳梗塞ラット脳内での、神経再生が生じるかどうか、免疫組織化学あるいは電気生理学的な検討を重ね、より強力な脳保護効果の発現が起こるかどうか観察をしていく予定である。
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