研究課題
廃用性骨萎縮は力の加わらなくなった骨において、若齢者も、あるいは高齢者においても急激な骨の量の減少として観察される。一方筋肉においても同様に廃用性の筋萎縮が起こることが知られている。これまで筋肉に受ける萎縮と骨における萎縮においては、必ずしも同一の観点からの解析がなされていない。これは、筋肉が細胞を主とするものであるのに対し、骨の場合には基質のリモデリングのバランスの乱れによるものであることから、概念的に別の事象とされてきたが、この観点の検証を行った。具体的には、Murf-1分子がE3型ユビキチンリガーゼであり、筋肉に関連する萎縮の責任分子とされていることから、骨におけるこの意義を検討した。メカニカル刺激の除去のもたらす廃用性骨萎縮をモデルとして、野生型ならびにMurf-1のノックアウトマウスの尾部懸垂を行った。この後にマイクロCTを行い、3次元的な解析を行って骨量(BV/TV)および、骨量の形態的な変化を検討した。特に屠殺の4日前および2日前にカルセインを投与し、動的なパラメーターとして石灰化速度、ならびに骨形成速度を検索した。さらに、破骨細胞の形態的な解析を行うために酒石酸耐性酸性フォスファターゼ(TRAP)の陽性の細胞を定量的に観察した。これらの検討の結果、Murf-1のノックアウトマウスにおいては骨の減少が、野生型に比べて抑制されていた。今日明らかにした骨代謝の動態におけるMurf-1欠失の影響の存在は、これまで筋肉の細胞内タンパクの分解の観点から捉えられていた萎縮のメカニズムの他に、骨芽細胞ならびに破骨細胞のバランスに関する本分子の新たな側面を明らかにし、これらのマトリックス分子の制御に関わる細胞ならびに転写因子の関与、さらには細胞レベルでの解析が達成された。
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