研究概要 |
小児悪性骨軟部腫瘍であるEwing肉腫は、全症例の90%以上に染色体相互転座t(11;22)が生じ、異常な融合遺伝子EWS/Fli-1が産生され、この遺伝子が発癌に関与しているとされる。よって本研究の目的は、EWS/Fli1を導入したEwing肉腫のマウスモデルを樹立し、病態解析および分子標的治療の基礎的研究を推進することである。 手始めとしてまず、導入遺伝子のサブクローニングを行った。これまでEWS/Fli1融合遺伝子を導入したトランスジェニックマウスは胎生致死などの理由で樹立の成功例はない。そこで今回、EWS/Fli1とともにCre/loxPシステムを組み込み、胎生期にその遺伝子発現を抑制することを試みることとした。サブクローニングは、loxP間にストップコドンおよびreporter geneとしてβ-ガラクトシダーゼを置き、さらにその後ろにEWS/Fli1融合遺伝子およびsecond reporter geneをおいた。このsecond reporter geneとしてアルカリフォスファターゼ(hPLAP)もしくはEGFPを組み込んで2種類のプラスミド(それぞれiz/APおよびiz/EG)を作成した。そしてこれら作成したプラスミドDNA(iZ/AP、iZ/EG)をマウス胎性幹細胞(embryonic stem(ES) cells)に導入ぐエレクトロポレート),し、G418でセレクションの後、βガラクトシダーゼの発現(LagZ染色にて青色に染まる)が確認できた細胞のみをピックアップした。ついでCreのDNAをさらに細胞導入しsecond reporter geneの発現の確認を行った。,その結果、iZ/AP導入細胞ではLacZ(-)かつhPLAPの発現(アルカリフォスファターゼ染色で紫色に染色)が確認できたものが2ラインだったが、iZ/EGではLacZ(-)で、EGFPの発現(緑色に発光)が確認できたセルラインはなかった。何度か繰り返したが、同様の結果であった。そのため今後、second reporter geneが発現したiZ/AP導入ES細胞のみをマウスembryoに移植すべく準備を進めていく予定である。
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