研究概要 |
目的: RNA干渉という新しい遺伝子制御方法を用いて、関節内投与核酸医薬品の可能性を検討するための基礎研究である。実際に関節内にsiRNAを担体と共に投与して組織に導入され、標的遺伝子抑制の可能性を検討する。遺伝子改変動物であるGFPラットを用いる。この動物の運動器組織でのGFPの発現をsiRNAで抑制を試みるものである。 培養実験: GFPラットから筋細胞、骨髄間葉系細胞、線維細胞を採取して培養、RNAiによるGFP阻害の最適なsiRNAデザインを複数候補決定した。複数種のsiRNAカクテルによる抑制を検討しているが、至適条件の設定に至っていない。一部培養細胞では固定標本作成後の蛍光顕微鏡下観察では、GFP蛍光の消失によりsiRNAが導入されたこと、特に線維芽細胞でのRNAi発生が高率であることが確認できている。投入効率評価には蛍光顕微鏡観察によって行っている。RNA抽出後ライトサイクラーにて定量的RT-PCRを行い、GFP阻害効果を定量化する予定である。 関節内投与に最適化したsiRNA担体の開発:関節腔という生体中の閉鎖空間にsiRNAを投与して導入効率の安定化を図るにはsiRNAをその場に留まらせ、分解を防ぐ担体が必要である。又、注射治療に適している素材である必要がある。担体にはアテロコラーゲンゲル、高分子ヒアルロン酸(80kda,190kda,500kda)を検討している。動物実験:デザイン決定後に動物実験を開始する。具体的には生後10〜12週齢のGFPラットの右膝関節にGFPのsiRNAを各種の担体と共に関節内投与する。時間経過と共に動物を安楽死させ、関節と主要臓器を標本として蛍光顕微鏡にてGFP蛍光の有無を対照と比較した。導入効率を上昇させ、抑制効果を十分に発揮するためには担体の開発が需要であるとの結論に到達し、現在その候補物質の選定と開発を行っている。
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