研究概要 |
軸索伸長の速度を決定するマスター遺伝子の決定を目的にDRG explant mode1を用いて培養条件による軸索伸長速度の違いを検討した。3次元培養に用いる基質を、コラーゲンゲル、マトリゲル、アルジネート、ヒアルロン酸及びその誘導体を用いた。マトリゲルが最も伸長が早く、アルジネートがこれに続いたが、軸索伸長速度に有意の差を認めなかった。そこで、bFGF, IGF, glial cell growth factor、 NGF,骨格筋抽出液、の添加による軸索伸長速度への影響を確認した。その結果骨格筋抽出液、とりわけ塩酸ブピバカインにより変性させ、骨格筋再生を誘発した骨格筋からの抽出液を添加したもので、急速な軸索伸長が見られること、この際の急速な軸索伸長にはDRGからのシュワン細胞の遊走を伴わず、複数の軸索が集合して伸長する極めてユニークな軸索伸長パターンをとることが分かった。中枢神経系で軸索伸長を抑制する遺伝子としてRho/Rho kinase、 P75NTRを介する情報伝達系の役割が確認され、その抑制が中枢神経系での軸索伸長を促進する事、末梢においてもRhoを介する情報を抑制する事で軸索伸長が促進される事が報告されるようになってきている。今年度はRhoを介する情報伝達系の活性を遺伝子レベルで確認し、siRNAを用いた抑制により塩酸ブピバカイン処理筋による軸索伸長抑制が影響をされるか、されるとすればどのような機序によるかを調べる。一方で、type I/IIIハイブリット素材よりなる人工神経内に塩酸ブピバカイン処理筋抽出液を添加し、生体内での軸索伸長促進効果を確認する。後者においては極めて臨床に近い系であり、また、仕様予定の人工神経は臨床応用を目指して開発中のものであり、有用性が確認できれば対象動物をより大型の動物に変更して、臨床への展開を模索する予定である。
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