研究概要 |
巨細胞腫と骨肉腫の共通プロセスとして、多核巨細胞、破骨細胞の多形成という病的プロセスが存在する。本年は破骨細胞形成の二つの経路、すなわちRANK-RANKLシステムとCD98-integrinシステムで形成される破骨細胞の異同について解析した。(1)RANK-RANKLシステムではM-CSFは必須のファクターであるが、CD98-integrinシステムではM-CSFは不可欠の因子ではない。(2)RANK-RANKLシステムで誘導された破骨細胞はデンチン表面に這ったような溶骨像を示すが、CD98-integrinシステムで誘導された破骨細胞はCa-プレートではRANK-RANKLシステムで誘導された破骨細胞より効率よく溶解するが、デンチン表面では孤立した小さい溶骨像しか示さない。(3)CD98-integrinシステムで破骨細胞を誘導する際、他のサイトカイン(M-CSF, interleukin-1a)は補助的に働き、破骨細胞形成効率はあげるが、デンチン表面上の走化性は亢進しない。(4)CD98-integrinシステムで誘導された破骨細胞は骨表面に対する付着性が弱い。このことが、デンチン表面上のピットの大きさや、走化性の制限をしていると考えられる。(5)両システムの間にpHやHCO_3^-の濃度に差が見られる。(6)CD98-integrinシステム破骨細胞形成系とRANK-RANKLシステム破骨細胞形成系お互いに独立系であるが、cross-talkも見られる。(7)今後、巨細胞腫と骨肉腫の発症病理に於いて破骨細胞形成の両システムの関与について解析する必要がある。
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