中性子捕捉療法の原理は1936年にLocherにより提唱された。腫瘍部に集積した放射線増感剤に、体表部から中性子を照射することにより放射線を放出させ、腫瘍を死滅させようとする治療方法である。中でもホウ素を放射線増感剤として治療を行う悪性黒色腫の臨床試験では良好な結果が報告されている。骨・軟部腫瘍の造影MRI検査で使用されるガドリニウムも、そのような放射線を放出する放射線増感剤の一つとして知られている。従って、ガドリニウムを使用した中性子捕捉療法は骨・軟部腫瘍疾患の診断と治療が同時に行える可能性を有している。しかし、これを中性子捕捉療法の放射線増感剤として発展させるためには、先ず腫瘍細胞へのガドリニウムの取り込みについて検討する必要がある。そこで、本研究では悪性軟部腫瘍細胞株を用いて、ガドリニウムの腫瘍細胞への付着取り込みをMRI上で評価が可能かどうかMRI造影剤を用いて調べた。悪性軟部腫瘍細胞株にMRI造影剤を作用させ洗浄した後に回収、遠心分離器にて細胞塊を作成した。そして、細胞塊をMRI装置に設置して細胞塊の信号強度を測定しT1値を算出したところ、MRI造影剤はT1値を低下させることが明らかとなった。また、実測にても細胞塊へのガドリニウムの付着取り込み量を確認できた。中性子補足療法を行うためには、腫瘍細胞へのガドリニウムの集積とその濃度の予測が中性子線の照射量を決定するのに重要である。本研究では腫瘍細胞へのガドリニウムの集積量がMRI上でも確認出来る可能性を示せた。
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